NPOやボランティアグループの会議は、メンバーそれぞれの意見が活かされることが理想ですが、なかなかそうはいきません。意見を求めてもシーンと静まり返ったり、話がテーマと違った方向へどんどん進んでしまったりと話し合いに手こずることもしばしばありますよね。特にビジネスの会議に慣れた人やおしゃべりが優先してしまう人など「会議の常識」が異なる人たちが集まる市民活動分野では、会議の目的地まで案内してくれる役割が必要です。
その役割を果たすのが「コーディネーター」と「ファシリテーター」。このふたつの役割はとても重要なのに、ごっちゃになって分かり難いですね。この記事では、それぞれの役割を分かり易く説明します。役割を理解することで会議の質がグンと高まりますよ。
コーディネーターとファシリテーターの違い
コーディネーターとファシリテーターは何が違うの?
同じに見えるけど「コーディネーター」は「会議の道筋をつくる人」、「ファシリテーター」は「会議の場をつくる人」と考えればいいですよ 。
「コーディネーター」は、会議の目的を踏まえて、出席者の意見をまとめ結論を出すためのプロセスをデザインします。団体が抱える問題点から課題を見つけ、その解決策を考え、団体が実際に動くための道筋をつくります。
「ファシリテーター」は、コーディネーターがデザインしたプロセスに沿って、会議進行に必要なワークショップ(以下ワークと書きます)の手法を選び、目的や場面に合わせて使い分け、出席者の意見を引き出し、まとめ、共有し、合意を取り付けます。
コーディネーターの役割
会議のコーディネートとは、プログラムをデザインし、その実現をサポートすることです。つまり計画を立て、目的を果たすために最も適する方法を考え、方向性がぶれないためのサポートを行うことで、コーディネーターはそれを実行する人です。
実際の会議でコーディネーターが気を付けなければいけないのは、あくまでプロセスをデザインし、コーディネーター自身が問題に対する解答を見つけるのではないということです。つまり、「議論に参加しない」という立ち位置を守ることが大切です。
コーディネーターは第3者ってこと?
同じ団体の仲間だと難しそう・・・
そう、それはファシリテーターも同じ。
外部の人に頼むという方法もあります!
会議のプロセスを考える
コーディネーターの役割は、会議のプロセスをつくることが中心になります。
会議のプロセスってなに?
難しそう!!
しっかりポイントを押さえれば大丈夫。
プロセスをきちんと組み立てられれば、会議はスムーズに進みますよ。
会議プロセスのポイントは、・・・
「何のためにやるのか」→→→会議目的を明確に
これがはっきりしなければ情報伝達とおしゃべりの会になってしまいます。
「何を決めるのか」→→→会議の目標を設定
目的に合った目標を決めます。場合によっては複数回にわたって協議しなければならないこともあります。
「どんな手法を使うのか」→→→ワーク手法の選定
大勢で話し合うのか、少人数で考えるのか、状況に合ったワークを選ぶことが大切です。
「記録をどうするのか」→→→記録方法の決定
もちろん従来の議事録でもいいですが、場合によってはビデオなどの記録が必要なこともあります。
会議プロセスをデザインするときは、次の4つのポイントをしっかり決めていきましょう。
- 明確な目的
- 到達したい目標
- 意見が出やすいワーク
- 状況に合った記録方法
ファシリテーターの役割
ファシリテーターってよく聞くけど、どんなことをするの?
簡単に言えば会議の進行を手助けする人。
司会とはちょっと違うから説明しますね。
会議ファシリテーションとは、プロセスに沿ってコーディネーターと共にプログラムを調整、出席者の意見を引き出しまとめて提示することで、合意を促します。その役割を担う人をファシリテーターと言います。
ファシリテーターは、ワークを組み入れた参加型会議には欠かせない存在です。ただし、進行をサポートしますが、自身が議論に参加しないという「役割を果たすための立ち位置」はコーディネーターと同じです。
意見を引き出しまとめるときに役立つ手法がワークです。話し合う内容に合わせたワークを使うことで、出席者の本音を引き出せたり、想像を越える発想が生まれたりもします。特に、課題を解決するために知恵を出し合うときには、テーマに合わせたワーク選びが重要になります。
ワークの選び方
ワークの手法はたくさんあります。ワークは会議のバリエーションを増やすことにつながり、ファシリテーション力を上げていくことにもつながります。
ワークを選ぶとき、まずその議題を個人で考えるのか、グループで話し合うのか、全体で議論するのかを考えます。特に意見が出にくいと思われるテーマの場合は、個人ワークで個々の意見を書き出し、次にグループで意見を出し合い、最後に全体としての結論を出すという展開にしていくと個々の意見を踏まえた結論を導き出すことができます。この方法は、限られた時間で決定しなければならないときにも役立ちます。
このように「個人の意見を引き出すワーク」と「グループで意見をまとめるワーク」、「全体の意見をまとめるワーク」を組み合わせて会議をデザインすることが基本になります。
それぞれの代表的な手法の一部を紹介します。
◆自己紹介カード・・・出席者のバックグランドと意見を自己紹介カードにして発表します。
◆インタビュー・・・進行役が質問し、それぞれの意見や意識を確認します。
◆ブレーンストーミング・・・自由に意見を出し合い、カテゴリー別にまとめ、その関連を考えます。
◆フレームワーク・・・議題に合わせたフレームをつくり、チェック項目を記入しながら話し合います。
◆シール投票・・・結論を出すためにシールを貼って投票。全体の意向を確認します。
◆YES・NOカード・・・質問に対して全員が「YES」「NO」カードを上げて意思表示します。
◆旗揚げアンケート・・・あらかじめ決めた3つの選択肢から選んで意思表示します。3つの選択肢は主催者が準備することもありますが、ワークで選択肢を決めることもできます。
ワークの手法は、このほかにもたくさんありますので、レパートリーをどんどん増やしていきましょう。
まとめ
以上、主に市民活動団体の会議に不可欠なコーディネーターとファシリテーターの2つの役割について書きました。これらは、15年以上市民活動団体の会議にコーディネーターとして関わってきた筆者が経験を通して得た情報です。みなさんのお役に立つことを願っています。
これも参考にしてください。
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