忘れられない言葉

永六輔さんの訃報に接し、30年ほど前のことを思い出しました。当時、私は家族と共にジャカルタで生活しており、長男は現地の日本人学校に通っていました。そこに永さんが訪れ、子どもたちと親の私たちを前に話された内容を今でも覚えています。

 子どもたちに向けて永さんはこう語りかけました。「みなさんは、日本からやって来た転入生で、いろいろ大変だと思います。でも、みなさんのお父さんやお母さんもこの国にやって来た転入生です。みなさんと同じように頑張っているんですよ」(正確な言葉は忘れてしまいましたが、このような意味だったと思います)。発展途上国での生活に四苦八苦していた私は、その言葉に救われ励まされたた思いでした。

 このように、長い年月を経た後も記憶に残る言葉があります。

 もう一つ、忘れられない言葉が「観・考・推・洞」です。これは物事や文章を考えるときに大切なポイントを表したものです。帰国して5年ほど経ち、PTA役員をしていた頃、誘われて行った藤本義一さんの講演会で耳にしました。

 「観・考・推・洞」は、考えるプロセスを示していて、まずは対象をよく観察し、考える。考えたことに対して様々な角度から推察していくうちに洞察に至るということでしょうか。講演会からしばらくたって、成り行きでミニコミ紙の記者になったとき、得意でもない記事を書くことに戸惑い手こずりましたが、このプロセスを手掛かりにしていくことで、取材した情報を文章として組み立てることができるようになりました。

 それだけでなく、なにか問題が起きたとき、解決するための策を考えていくプロセスとしても大いに役立ちます。みなさんも是非一度、試してみてください。

 偶然かもしれませんが、2人とも物書きとして大成した人たちです。人の感性に響き、記憶に残り、生きるための術になる「言葉の力」。本当に素晴らしい。言葉を介して人と接し、文字を通して本と接することで、生きる力を得るための学びを続けていきたいものです。

※この記事は7月12日のものですが誤って削除してしまいましたので、再度アップします。