住民が満足するワークショップの進め方

高齢化や防災など地域の課題を解決するために住民が集まって話し合うことが増えています。以前は限られた人たちで話し合い、その結果を住民に伝え実施するといった形が一般的でしたが、近頃は住民参加型のワークショップ(以下ワークと書きます)もあちこちで開かれるようになりました。

しかし、グループに分かれて話し合っても「話のテーマがはっきりしない」「何が決まったのかわからない」といった問題もしばしば起こります。参加した人たちが、それぞれの思いを話すだけでは、問題解決のためのワークにはなりません。では、どうしたらいいのでしょうか?

ワークは、少しの準備とちょっとした工夫で楽しく成果が生まれる話し合いの場になります。住民の力を発揮し、「参加して良かった」と思えるワークのヒントを紹介します。

地域のワークをつまらなくする原因は?

地域での住民参加型ワークでは次のような事が起こりがちです。

Sjun
Sjun

地域で開くワークでこんなことに困ったことはありませんか?

地域のワークで起こりがちな問題

①   地域のボスが大きな声で意見を言うことで、話し合いの方向性が決まってしまう

②   無関心な住民の「特に意見はない」「話すことはない」などのネガティブ発言により場が白ける

③  出席者がワークのテーマをよく理解していないため、話がなかなか進まない

④   結論が出ない

このような問題点を解決していくためにはどうしたらよいのでしょうか。

ワークの「困った!!」を解決する 5つの大切な視点

【問題➀】 地域のボスが大きな声で意見を言うことで、話し合いの方向性が決まってしまう

対策】地域の序列や力関係は侮れません。しかし、それに配慮しすぎるとワークを開催した意味が無くなってしまいます。有力者もそうでない人もワークという場では共通のルールで話し合うことが大切です。予め発言の持ち時間を決めておき、それを基に調整し合うことも有効な方法です。

【問題②】無関心な住民の「特に意見はない」「わからない」などのネガティブ発言により場が白ける

対策】どのようなワークでもいやいや参加する人はいます。特に、地域での話し合いは「役員だから仕方なく」というケースもままあります。まずは、ネガティブな意見に引きずられないことが大切です。あらかじめ「他の意見を否定しない」「前向きな意見を出す」などを決めておくこともできますが、そのようなルールは無視されがちです。進行役は、諦めずに根気よく働きかけることが必要です。

問題③】出席者がワークのテーマをよく理解していないため、話がなかなか進まない。

対策】ワークにぶっつけ本番は通用しません。事前に参加者へテーマや話し合いの結果が何につながるのかを知らせることが、ワークショップの成否を決めます。いきなり問われて意見を言える人はごく僅かです。住民が日頃思っていること、感じていることを意見としてまとめる時間が必要です。

問題④】結論が出ない

対策】参加者それぞれが言いたいことを言うだけではワークにはなりません。意見を共有してその場でのまとめを結論とすることが一般的です。人の話を聞き、自分の意見を調整しながら、グループとしてのまとめを創り出していきます。進行役は、意見をまとめながら結論の落としどころを探ります。

進行役に求められる8つの役割

地域の会議でワークをする場合、進行役が大きな役割を果たします。どのようなことをするのかを「事前準備」と「会議」に分けてその役割を説明します。

【事前準備のための4つの役割】

①   話し合うテーマを決める 出席者全員で話し合える共通テーマがなければワークはできません

②   あらかじめテーマをメンバーに知らせる メンバ―にもテーマについて考える時間が必要です

③   全員の意見を引き出すためのテーマに合ったワークを考える 全体で話し合うのか、グループに分かれるのか、付箋を使うか、板書するのかなど

④   意見を引き出すための「質問」を考える 「ご意見はありませんか?」だけでは出てきません。発想を広げたり掘り下げていくための質問を用意しましょう

会議進行での4つの役割

⑤  協議に使える時間を出席者に伝え、時間の管理をする 進行役の一番大切な役割は時間管理です

⑥   意見を見える化する 板書や模造紙、付箋を使って話し合いの経過が見えるようにします

⑦   出た意見の関連から次の意見を引き出す 
それぞれの意見のつながりに注目し、話を広げます

⑧   意見が出にくいときは例を示す
 出席者が「何を聞かれているのか」を理解できないと意見は出てきません。「例えば・・・」とイメージを伝えると意見が出やすくなります

ワークをまとめて結論を出す

Sjun
Sjun

ワークのまとめ方に「これでなきゃダメ」という方法はありません。ワークをまとめるためによく使う3つの方法とそれぞれの結論の導き方を紹介します。

【ひたすら板書法】出席者が話していることをひたすらホワイトボードや模造紙に書いていくという手法。話している内容を全て漏らさず書いていくという方法もありますが、それが無理な場合は、ポイントと思われる部分を書くということでよいと思います。その場合、発言者の名前も書いておきましょう。
ひたすら板書法のポイント
この手法のメリットは、出席者全員に会議の進捗が見えるということ。「今、何を話しているのか」がよくわかり、時間がたって「○○さんは何て言ったのか忘れた」ということが防げます。そのためには、ひたすら書いていく板書係が1~2名必要です。進行係は、テーマに沿って出た意見のポイントや関連性を考えながら進行し、話し合いをまとめていきます。板書を写真に撮れば、そのまま議事録が完成します。

結論のだし方】書き出した意見の中からポイントとなる箇所を全員で拾い出し、マーカーで印を付けていきます。そのポイントを組み合わせたり優先順位をつけるなどして、結論をまとめていきます。

付箋カテゴリー分類法】 1人ひとりが付箋に意見を書き、同類の意見をグループ化します。「付箋1枚に1項目」というのがルール。これは、たくさんのアイデアを出して、それをカテゴリーに分け、メンバーの意見を分類していくまとめ方です。
付箋カテゴリー分類法のポイント
付箋を貼るときは、意見の内容と理由を説明し、どの意見に近いのかを考えてグループ化します。同じ言葉で書かれていても、異なる内容ということもありますので、しっかり説明して本人の判断で貼ります。くれぐれも人任せにしないことが大切です。

結論のだし方】カテゴリーにテーマやタイトルをつけていくことが一般的。多くはそこで終わりますが、それでは結論が出たとは言えません。ですので、そこにそれぞれのテーマやタイトルの内容説明を付けていき、話し合いの目的に合わせて、付箋グループのまとめや削除をします。残った付箋グループそれぞれの関係性や流れを把握し、結論としてまとめていきます。
プロセス紙芝居法】 小グループ向きの手法。会議のプロセスごとに話し合いのまとめをA4~3用紙に書き、その流れを紙芝居風に組み立てます。枚数は必要に応じて変更可能です。
プロセス紙芝居法のポイント
 少人数でしっかり話し合い、合意できた内容を書き留めていくことで、次の話し合いの基礎を作ります。話し合いの経過をストーリー化することで、メンバーがより話し合いの内容を理解することができます。

結論のだし方】紙芝居に書かれた内容が、既に結論になっていますので、その内容を協議の目的に合わせた形に再編集すればOKです。

これら3つの手法は、どれも出席者のワークへの参加意識を高めるための方法です。出席者を当事者にすることが、「満足するワーク」にするために何より大切です。

まとめ

地域でのワークは、出席者はもちろん進行役も同じ地域で暮らす顔見知りの場合があります。そのようなとき、どうしても話が表面的になってしまい、本音の議論がしにくくなってしまいます。

ワークを意義あるものにするために、ぜひ、この記事で紹介した手法を取り入れてみてください。確実に話し合いの雰囲気が変わります。楽しみながら実りあるワークを実現してください。

これも参考にしてください。
「会議コーディネーター」と「会議ファシリテーター」との違いは?