突然、ひとり暮らしの親が倒れた! 私が実家を売った理由

離れて暮らす実家の母が突然倒れました。

「さぁ、どうしよう!」
「何をすればいいの?」

母の入院から怒涛の3カ月が始まりました。入院、転院、施設探し、入所、実家処分と同時並行で一気に進めた実家じまい。迷い、悩みながら進めた経過を残しておきます。同様の事態に困った方が、少しでも落ち着いて行動するための情報提供になれば嬉しいです。

ヘルパーさんの電話で始まった大騒動

2018年9月のある日、ヘルパーさんから突然の連絡がありました。

「お母さんが3日間、飲まず食わずでベッドから起き上がれない状態です。至急、来てください」。

高速道路を飛ばして実家に行くと、やつれた様子の母がベッドにぐったりと横たわっています。何を聞いても「痛い、痛い」と言うばかり。腰が痛くて動けないらしい。それも尋常ではない痛みのよう。

早速、かかりつけ医の先生に電話で相談しましたが、内科では判断できないとのこと。車で病院に連れて行こうにもベッドに座ることすらできません。結局、救急車で救急病院へ運んでいただきました。その間、「痛い、痛い」と叫びっぱなし。診察の結果、「第12胸椎骨折」でした。みぞおちの後ろ当たりの背骨がつぶれていたようです。

その日のうちに即入院。急性期病院に4週間入院した後、リハビリのための病院へ転院し、更に4週間の入院です。この入院生活で母はすっかり生きる意欲を失くしてしまったようで、ボーっとしていることが増えました。

看護士さんのアドバイスで施設探しスタート

急性期の病院は長期間の入院ができません。担当の看護士さんから「歩こうという意欲が無い人がリハビリ病院に入ると辛いし、すぐに出されてしまいますよ」と言われ、退院後の居場所を急いで探すことに。選択肢は3つ。実家近くの高齢者施設、リハビリ病院、私の自宅近くの高齢者施設です。急な話でもあり、2週間程度で次の居場所を探すのはかなり難しく、結局、急性期病院の系列であるリハビリ病院に転院することになりました。母には辛い訓練かもしれないと心配しましたが、ベッドに横になっていることが多く、早々に退院を促されました。

母の入院中は、当然、頻繁に病院へ行かなければなりません。私も高齢者なので、頭も身体も思うように動きません。往復3時間の車移動が次第に苦痛になってきます。当初は、実家の近くの施設を中心に探していましたが、「あんたの好きなようにしていいよ」という母のひと言で、私の自宅近くの施設に移ってもらうことにしました。

ところが、そう簡単に事は運びません。どこにどのような施設があるのか全く知らなかったからです。そこで、「みんなの介護」というサイトで検索し、いくつか資料を送ってもらい、その中からこちらの条件に合う4つの施設を見学しました。即入居できるのは2カ所。結局、こちらの状況に合った施設に入ることができました。そこは、自宅から車で5分の住宅型有料老人ホームで、「いつでも行ける」という安心感からそれまで重かった気持ちが少し楽になりました。

実家には戻れない、維持も大変、思い切って処分しよう

実は、今回の大騒動で一番大変だったのはこれ。母が倒れる2年ほど前から、次第にごみ屋敷化していく実家が心配になり「一緒に片付けよう」と言っても無反応。娘と2人で少し片づけただけで「それはまだ使うから」とゴミ袋から出してくる始末。特に衣類の量が半端なく、脱ぎ捨てた衣類が堆積する様子を見るだけで「片づけよう」という意欲が根こそぎなくなっていました。

入院を切っ掛けに今後母が実家に戻らない事が決まった時、空き家となった築50年の実家を持ち続けることに大きな不安が生まれました。私はひとりっ子なので相続で揉める心配がないかわりに、さまざまな負担が一挙に圧し掛かってきます。その負担を少しでも軽くしたいというのが、私の一番の望みでした。何故なら、私が残した負担は子どもたちが負うことになるからです。それは、可能な限り避けたかった。という訳で、実家を売却する決心をしました。

なぜ売却を急いだのか

母が入院した2週間後から、住宅売却に関する情報収集を開始しました。それ以前、元気だった頃から「実家の片付け」に関する本を買い集めては読んでいましたが、「実家を売る」という発想はありませんでした。それというのも、年々出来ることが減っていく母を見て、施設への入居を勧めても「動けるうちは我が家で暮らす」と言い張り、実家近くの施設を見学に行っても「時々は家に帰りたい」という母の気持ちを尊重して、亡くなるまではそのままにしておくつもりでした。

しかし、入院中に調べていく内に重大なことが分かってきました。母は常々「貯金は無いからね」と言ってはいましたが、本当に何もありませんでした。収入は年金のみ。今後の生活は、支給される年金だけで賄わなくてはいけません。何かあった時のためのお金を確保しておく必要性を強く感じました。ということで、売却して母の貯金を確保することを選びました。

業者「探し」と「選び」の決め手

「業者探し」と言っても、私の頭の中には不動産会社の店舗を一軒一軒訪ねて話を聞くイメージしかありませんでした。しかし、ネットで実家近くの不動産会社を探している内に「不動産一括査定」のサイトを見つけ、早速、依頼しました。

メールで依頼するとすぐに4つの会社に査定依頼したとの連絡がありました。いずれも実家から比較的近い場所にある会社でした。翌日、A社とB社からメールで査定額の連絡があり、しばらくしてC社からも電話がありました。3社の担当者から話を聞くことで、自分がどのような売却をしたいのかがハッキリしてきました。

実家は築50年の木造家屋なので、「古屋付き土地」という扱いになるとか。最初、3社とも「仲介」で売った場合の金額を出してきました。その額は想像していたものより高かったのですが、それはあくまで希望価格で、買い手がつかなければ1年以上売れないこともあるそうです。そこで、「買い取り」してもらえるのかを打診したところ、A社は建売業者を仲介することで待たずに売れる状況をつくってくれました。また、C社は「買い取りも出来ますが、かなり安くなりますよ」という事で「一定期間仲介で出してみて、反応が無ければ買い取りというのはいかがですか」とアドバイスしてくれました。じっくり検討した結果、C社に「安くなってもいいから」と買い取りをお願いすることにしました。

理由は、仲介物件にすることで雑事が増えることを避けたかったからです。見学希望者がある度に往復3時間かけて対応する自信がありませんでした。そして、「決めたらすぐに実行したい」という私の性格が一番の理由だったのかもしれません。ということで、業者探しから約1カ月でC社と売買契約を結びました。

売却して「良かったこと」「残念だったこと」

良かったことは、何といっても「空き家」になった実家の維持負担から解放されたことです。これは、精神的にとても大きなことです。それから、売却することで明け渡し期限が決まり、それに伴う片付けが短期集中で出来たことです。実質1カ月で、木造2階建てにギッシリ詰まった不用品を片付けることができました。母の元気な頃から「こんな大量の不用品をどうやって片付けるの?」というお手上げ状態から、一部業者にお願いしたものの、両親の大切なものを一つひとつ確認しながら処分できたことは本当に良かったと思います。

売却で「残念だったこと」はありません。それだけ私にとって「実家」の存在が重かったのかもしれません。

その後の話

生まれてから一度もふるさとを出たことがない母は、私の自宅近くの施設に入居してから精神的にも落ち着き、「要介護2」から「要介護1」になりました。ひとり暮らしは気楽だけど、後期高齢者の孤独感や不安はそれ以上に大きかったのだと思います。住み慣れた家を手放すのはとてもつらい事だったでしょうが、入院を切っ掛けに「売却」を決めなければ、未だにいろいろ悩み続けていたと思います。早い決断は、私のシニア生活にも「安心」を与えてくれました

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